沈黙の傍にしゃがみこんで。
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
2月15日、木曜日。
お昼休みが終わった、
次の時間。
5限目ですか。
いじめ防止講和会、
ってのがありました。
講師の方が
1時間近くかけて
お話になった実体験を
紹介したいと思います。
お話を始められる前の
講師の方の、
言葉。
みんな、それぞれが、
今から話すお話の登場人物になったつもりで
聞いてくださいね。
***
警察署の扉が、突然、
勢いよく開いた。
驚いて目を丸くする佐藤(仮)の目の前に現れたのは
髪を明るい色に染めた、1人の少女。
入ってくるなり、
少女はこう叫んだ。
「あたしを鑑別所にいれろぉ!!!」
少女の口からは、
シンナーの臭いがした。
***
少女の名前はヒロコ(仮)、
まだ16歳だった。
取調室で一通り話を聞いた佐藤は
廊下で待つ
ヒロコの母親の元へと向かった。
「ヒロコさんのお母さんですね?」
「・・・はい」
彼女は俯いて
目に涙をためていた。
「ヒロコさん、
鑑別所に入りたいと言っているんです」
「・・・」
「どうしますか」
「・・・あの子の好きなようにさせてあげてください」
佐藤は家庭裁判所での
手続きを行った。
書類に判子が押され、
ヒロコは鑑別所に入ることになった。
母親の目の前で
手錠をかけられる娘。
ヒロコは母親にこう言った。
「てめぇ、」
「勝手に部屋にはいんじゃねぇぞ」
「はいったらぶっ殺すからな」
母親は俯いて
小さく小さくなった。
***
ヒロコの家は5人家族。
共働きの両親と
年の離れた2人の兄がいる。
共働きということもあって
暮らしは比較的豊かなものだった。
でも、大きな問題があった。
父親は仕事から帰ってくると
なにかと文句をつけては
子供達を殴りつけた。
殴り、蹴り、罵り。
母親はそんな父親から
必死に子供達を守った。
子供に覆いかぶさって暴力を防ぎ、
自分が犠牲になって。
毎日毎日毎日毎日、
そんな暮らしは続いていた。
上の兄が高校3年生、
下の兄が高校2年生のときだった。
2人は母親に言った。
「俺たち、父さん殺すから」
2人は綿密な殺人計画をたてていた。
本気だった。
母親は、そんな息子達に
「バカなこと言うんじゃないの」
「あんたたちは、」
「ここから離れなさい」
そう説得した。
母親の必死の思いが伝わったのか、
息子達はそれぞれ
高校を卒業してから
県外の会社へ就職した。
まだ小学生だったヒロコは
1人になった。
***
そんなヒロコのために
母親はせめて美味しいご飯を
食べさせてあげようと思った。
けれどヒロコは、
夕食ですらまともに食べることができなかった。
食卓について、ご飯を食べる。
それでも父親が帰宅する音が聞こえると
お箸を置いて
自分の部屋に篭った。
そして、小さく小さく丸まって
体を硬くした。
誰も自分を傷つけないように。
父親から、逃げた。
そんなヒロコに父親は
ひたすら暴力を続けた。
母親はそれを
体をはって守ろうとした。
家の中に、落ち着ける場所なんて無かった。
***
ヒロコが唯一、楽しいと思える時間。
それは学校で
友だちといる時間だった。
仲良しグループで遊んでいる時、
ヒロコは幸せだった。
学校へは、
楽しみで仕方なくて
10分するかしないかで到着。
なのに家に帰る時間は
2時間も、3時間もかかった。
重たい足を引きずって
頑張って家に帰っていた。
ある時、仲良しグループのリーダーが
他の女の子をいじめるようになった。
「そんなことしちゃダメだよ」
注意したヒロコは
リーダーにシカトされるようになり、
みんな彼女に従った。
誰もヒロコに話しかけてくれる人は
いなかった。
学校にも、
ヒロコの居場所は無くなっていた。
そんな辛い日々が、
どんどんヒロコを追い詰めていった。
ヒロコは屋上へ続く階段を
のぼっていった。
何をするつもりだったのかは
ヒロコにしか分からない。
その時1人の先生が
ヒロコの腕を掴んでくれていなかったら
ヒロコはどうなっていたんだろう。
先生はヒロコの話を聞いてくれた。
何でも聞いてくれた。
ヒロコは先生に会うために
学校に通った。
どれだけ心を救われたのか、
ヒロコは少しだけの
小さな居場所を見つけた。
***
中学生になった。
気持ちを新たに
ヒロコは卓球部に入部して
楽しい学生生活を送っていた。
顧問の先生は優しい人で
ヒロコは毎日が楽しかった。
それなのに。
ヒロコが中学2年になったとき
顧問の先生は転勤してしまった。
それと同時に
またヒロコに対するシカトが始まった。
同じ小学校だった誰かが、
ヒロコが小学生の頃シカトされていたことを
話したのだろう。
すぐに広まった話は
再びヒロコを地獄に突き落とした。
ヒロコは自分の体を、
顔、腕、足、いたるところを、
刃物で傷つけるようになった。
廊下を自転車で走り回ったり、
壁をおもいっきり叩いたり、
一晩中、夜遊びをしたりしていた。
母親は学校に呼び出されて
注意をうけた。
学校でなにかあっているのではないか、
そう思ったが
まだこの学校に娘をお願いしなくてはいけない、
そう考えると何も聞くことができなかった。
夜遊びをしてヒロコにできた
唯一の友だち。
彼女はシンナーを吸っていた。
悪いことだとわかっていても
ヒロコは友だちを失うのが怖かった。
勧められるまま、
ヒロコはシンナーを吸い続けた。
***
ヒロコが鑑別所に入っていた1ヶ月間、
母親は毎日、仕事を終えてから
ヒロコに面会に行った。
佐藤はヒロコと文通をして
ずっと心から応援を続けた。
1ヵ月後、
鑑別所から出てきたヒロコは
こう言った。
「ありがとう」
「シンナー、やめれたよ」
母親はヒロコのために、
暴力をふるう父親と離婚した。
ヒロコと母親は
2人で暮らし始めた。
ここから、また、始まる。
***
佐藤はなるべく
ヒロコの家に遊びに行くようにしていた。
ヒロコの話を聞いて、
母親の話を聞いて、
そして勇気づけた。
それでもヒロコから
こんな電話がかかってくることがあった。
「何であたし生まれてきたの?」
「あたしなんて死んだ方がマシだよ」
佐藤はヒロコに会いに行った。
ヒロコが自分から話してくれるまで
何時間も待った。
ヒロコは鑑別所の所員に、
髪を黒くすること、
夜遊びをやめること、
働くこと、
シンナーを吸う友達と縁を切ること、
この4つを守れ、と言われたのだ。
「あたしバカやけん、」
「こんなの一気にできないよ」
そう言うヒロコに、佐藤は言った。
「4つも一気にとか俺だってできんよ」
「1つずつ、やってみよう」
「どれなら、できそう?」
ヒロコは必死に考えた。
今の自分は
どれだったら出来るだろうか。
「髪、黒くしよっかな」
佐藤が次にヒロコの家を訪ねたとき、
ヒロコの髪は真っ黒だった。
ヒロコはそうやって少しずつ、
壁を乗り越えていった。
夜遊びもやめた。一生懸命働いた。
でも、
友達との縁を切ることだけは
どうしても出来なかった。
佐藤はその友達も一緒に呼んで
みんなで話をした。
そして一緒に頑張って、
シンナーをやめさせた。
彼女も今は必死に働いている。
***
ヒロコは21歳になった。
「今はすごく楽しい」
「生きてて良かった」
ヒロコが鑑別所に入っているとき
母親はこっそり
ヒロコの部屋に入った。
掃除をして綺麗になった部屋で
新たな気持ちで頑張ってほしいと
思ったからだ。
その時、本の隙間から
母親宛ての手紙が出てきた。
謝罪の言葉と、
絶対にお母さんを幸せにしてやる、
そんな言葉が書いてあった。
母親は今、こう言っている。
「やっとお母さんって呼んでくれるようになった」
「死なないでくれて本当に良かった」
ヒロコはようやく
自分の居場所を見つけることができた。
本当の居場所。
これから先、どんなに辛いことがあっても、
彼女なら乗り越えていける。
そんな気がする。
居場所はきっと絶対に
必ずどこかにあるはずです。

⇔友だちって大切ですね(・∀・)
お昼休みが終わった、
次の時間。
5限目ですか。
いじめ防止講和会、
ってのがありました。
講師の方が
1時間近くかけて
お話になった実体験を
紹介したいと思います。
お話を始められる前の
講師の方の、
言葉。
みんな、それぞれが、
今から話すお話の登場人物になったつもりで
聞いてくださいね。
***
警察署の扉が、突然、
勢いよく開いた。
驚いて目を丸くする佐藤(仮)の目の前に現れたのは
髪を明るい色に染めた、1人の少女。
入ってくるなり、
少女はこう叫んだ。
「あたしを鑑別所にいれろぉ!!!」
少女の口からは、
シンナーの臭いがした。
***
少女の名前はヒロコ(仮)、
まだ16歳だった。
取調室で一通り話を聞いた佐藤は
廊下で待つ
ヒロコの母親の元へと向かった。
「ヒロコさんのお母さんですね?」
「・・・はい」
彼女は俯いて
目に涙をためていた。
「ヒロコさん、
鑑別所に入りたいと言っているんです」
「・・・」
「どうしますか」
「・・・あの子の好きなようにさせてあげてください」
佐藤は家庭裁判所での
手続きを行った。
書類に判子が押され、
ヒロコは鑑別所に入ることになった。
母親の目の前で
手錠をかけられる娘。
ヒロコは母親にこう言った。
「てめぇ、」
「勝手に部屋にはいんじゃねぇぞ」
「はいったらぶっ殺すからな」
母親は俯いて
小さく小さくなった。
***
ヒロコの家は5人家族。
共働きの両親と
年の離れた2人の兄がいる。
共働きということもあって
暮らしは比較的豊かなものだった。
でも、大きな問題があった。
父親は仕事から帰ってくると
なにかと文句をつけては
子供達を殴りつけた。
殴り、蹴り、罵り。
母親はそんな父親から
必死に子供達を守った。
子供に覆いかぶさって暴力を防ぎ、
自分が犠牲になって。
毎日毎日毎日毎日、
そんな暮らしは続いていた。
上の兄が高校3年生、
下の兄が高校2年生のときだった。
2人は母親に言った。
「俺たち、父さん殺すから」
2人は綿密な殺人計画をたてていた。
本気だった。
母親は、そんな息子達に
「バカなこと言うんじゃないの」
「あんたたちは、」
「ここから離れなさい」
そう説得した。
母親の必死の思いが伝わったのか、
息子達はそれぞれ
高校を卒業してから
県外の会社へ就職した。
まだ小学生だったヒロコは
1人になった。
***
そんなヒロコのために
母親はせめて美味しいご飯を
食べさせてあげようと思った。
けれどヒロコは、
夕食ですらまともに食べることができなかった。
食卓について、ご飯を食べる。
それでも父親が帰宅する音が聞こえると
お箸を置いて
自分の部屋に篭った。
そして、小さく小さく丸まって
体を硬くした。
誰も自分を傷つけないように。
父親から、逃げた。
そんなヒロコに父親は
ひたすら暴力を続けた。
母親はそれを
体をはって守ろうとした。
家の中に、落ち着ける場所なんて無かった。
***
ヒロコが唯一、楽しいと思える時間。
それは学校で
友だちといる時間だった。
仲良しグループで遊んでいる時、
ヒロコは幸せだった。
学校へは、
楽しみで仕方なくて
10分するかしないかで到着。
なのに家に帰る時間は
2時間も、3時間もかかった。
重たい足を引きずって
頑張って家に帰っていた。
ある時、仲良しグループのリーダーが
他の女の子をいじめるようになった。
「そんなことしちゃダメだよ」
注意したヒロコは
リーダーにシカトされるようになり、
みんな彼女に従った。
誰もヒロコに話しかけてくれる人は
いなかった。
学校にも、
ヒロコの居場所は無くなっていた。
そんな辛い日々が、
どんどんヒロコを追い詰めていった。
ヒロコは屋上へ続く階段を
のぼっていった。
何をするつもりだったのかは
ヒロコにしか分からない。
その時1人の先生が
ヒロコの腕を掴んでくれていなかったら
ヒロコはどうなっていたんだろう。
先生はヒロコの話を聞いてくれた。
何でも聞いてくれた。
ヒロコは先生に会うために
学校に通った。
どれだけ心を救われたのか、
ヒロコは少しだけの
小さな居場所を見つけた。
***
中学生になった。
気持ちを新たに
ヒロコは卓球部に入部して
楽しい学生生活を送っていた。
顧問の先生は優しい人で
ヒロコは毎日が楽しかった。
それなのに。
ヒロコが中学2年になったとき
顧問の先生は転勤してしまった。
それと同時に
またヒロコに対するシカトが始まった。
同じ小学校だった誰かが、
ヒロコが小学生の頃シカトされていたことを
話したのだろう。
すぐに広まった話は
再びヒロコを地獄に突き落とした。
ヒロコは自分の体を、
顔、腕、足、いたるところを、
刃物で傷つけるようになった。
廊下を自転車で走り回ったり、
壁をおもいっきり叩いたり、
一晩中、夜遊びをしたりしていた。
母親は学校に呼び出されて
注意をうけた。
学校でなにかあっているのではないか、
そう思ったが
まだこの学校に娘をお願いしなくてはいけない、
そう考えると何も聞くことができなかった。
夜遊びをしてヒロコにできた
唯一の友だち。
彼女はシンナーを吸っていた。
悪いことだとわかっていても
ヒロコは友だちを失うのが怖かった。
勧められるまま、
ヒロコはシンナーを吸い続けた。
***
ヒロコが鑑別所に入っていた1ヶ月間、
母親は毎日、仕事を終えてから
ヒロコに面会に行った。
佐藤はヒロコと文通をして
ずっと心から応援を続けた。
1ヵ月後、
鑑別所から出てきたヒロコは
こう言った。
「ありがとう」
「シンナー、やめれたよ」
母親はヒロコのために、
暴力をふるう父親と離婚した。
ヒロコと母親は
2人で暮らし始めた。
ここから、また、始まる。
***
佐藤はなるべく
ヒロコの家に遊びに行くようにしていた。
ヒロコの話を聞いて、
母親の話を聞いて、
そして勇気づけた。
それでもヒロコから
こんな電話がかかってくることがあった。
「何であたし生まれてきたの?」
「あたしなんて死んだ方がマシだよ」
佐藤はヒロコに会いに行った。
ヒロコが自分から話してくれるまで
何時間も待った。
ヒロコは鑑別所の所員に、
髪を黒くすること、
夜遊びをやめること、
働くこと、
シンナーを吸う友達と縁を切ること、
この4つを守れ、と言われたのだ。
「あたしバカやけん、」
「こんなの一気にできないよ」
そう言うヒロコに、佐藤は言った。
「4つも一気にとか俺だってできんよ」
「1つずつ、やってみよう」
「どれなら、できそう?」
ヒロコは必死に考えた。
今の自分は
どれだったら出来るだろうか。
「髪、黒くしよっかな」
佐藤が次にヒロコの家を訪ねたとき、
ヒロコの髪は真っ黒だった。
ヒロコはそうやって少しずつ、
壁を乗り越えていった。
夜遊びもやめた。一生懸命働いた。
でも、
友達との縁を切ることだけは
どうしても出来なかった。
佐藤はその友達も一緒に呼んで
みんなで話をした。
そして一緒に頑張って、
シンナーをやめさせた。
彼女も今は必死に働いている。
***
ヒロコは21歳になった。
「今はすごく楽しい」
「生きてて良かった」
ヒロコが鑑別所に入っているとき
母親はこっそり
ヒロコの部屋に入った。
掃除をして綺麗になった部屋で
新たな気持ちで頑張ってほしいと
思ったからだ。
その時、本の隙間から
母親宛ての手紙が出てきた。
謝罪の言葉と、
絶対にお母さんを幸せにしてやる、
そんな言葉が書いてあった。
母親は今、こう言っている。
「やっとお母さんって呼んでくれるようになった」
「死なないでくれて本当に良かった」
ヒロコはようやく
自分の居場所を見つけることができた。
本当の居場所。
これから先、どんなに辛いことがあっても、
彼女なら乗り越えていける。
そんな気がする。
居場所はきっと絶対に
必ずどこかにあるはずです。
PR
この記事にコメントする